ファッションデザイナーの森英恵さんは、2022年8月11日に96歳で亡くなられました。
皇后雅子さまのロイヤルウェディング衣装や日本航空の客室乗務員制服など、数々の著名な作品を手がけてきた方ですが、実は全国の高校の制服もデザインしていたことをご存じでしょうか。
SNS上では母校の制服が森英恵さんのデザインだったことを初めて知った卒業生たちから、感謝や驚きの声が相次ぎました。
本記事では、森英恵さんが手がけた高校制服について、確認されている学校と、その背景にある思想、そして現在の制服費用との関係をまとめました。
全国8校で現在も使用される森英恵さんの制服デザイン
2026年3月17日時点で、森英恵さんがデザインした制服を使用していたと確認できる高校は、全国で7校です。
まず有名なのが埼玉県立越谷南高校です。2022年の報道では、この学校は30年以上にわたって森英恵さんの制服を使用していたとされています。特徴は、オリーブ色を基調とした落ち着いた色合いと、ボタンに施された森英恵さんのトレードマーク「蝶」のマークです。県立越谷南高校の公式サイトでは、この制服を学校の重要な資産として誇りをもって紹介しており、2024年時点でも同じデザインが使用されていることがわかります。
大阪府の四天王寺高等学校は、1982年から森英恵さんの制服を採用している歴史ある採用校です。灰色を基調とした大人っぽいブレザースタイルで、現在もこの制服が使用されています。
その他、和歌山県の修徳高校(1983年から採用)、大分県の藤蔭高等学校、鹿児島県の樟南高校(1990年から採用)、福岡県の福岡第一高等学校、大阪府の大阪暁光高校(過去に20年以上採用)が確認されています。
高校制服の一般的な費用相場~森英恵デザインはプレミアム価格か
高校制服の費用について、2026年3月現在の調査結果を見てみましょう。
公正取引委員会の調査によると、公立高校の制服一式の平均費用は以下の通りです。
- 高校男子制服一式:約70,767円(ブレザー、シャツ、ネクタイ、セーター、ベスト、コートなど)
- 高校女子制服一式:約75,402円(ブレザー、ブラウス、リボン、セーター、ベスト、コートなど)
ただし、デザインが凝っていたり、校章の刺繍があったり、素材が高級な場合はさらに高くなることが一般的です。
森英恵さんのデザイン制服の具体的な価格
残念ながら、森英恵さんがデザインした各高校の制服の定価は、学校が公開していないため詳細は明らかになっていません。しかし、中古販売記録からはある程度推測できます。
県立越谷南高校の場合:
- 冬服と夏服のセット(中古)で約25,000~35,000円で取引されている
- 新品購入時はこれより高い可能性が高い
四天王寺高等学校の場合:
- 中古制服の買取相場:フルセットで約15,000円
- Yahoo!オークションでの過去180日間の落札相場:平均10,138円(個別アイテム)
中古価格が全国平均の公立高校制服と同等か、むしろ低いことから、森英恵さんのデザイン制服であっても、極端に高価というわけではないことがうかがえます。むしろ、デザイナーの技術と美学を手頃な価格で享受できたのではないでしょうか。
制服費用の上昇トレンド~質の高いデザインの価値
日本経済新聞の2025年3月4日の報道では、「学生服の単価が10年間で3割上昇し、男女ともに上下セットで3万5千円以上が一般的になった」と報じられています。つまり、現在の高校制服は、新品で購入する場合、一式揃えるのに約7~8万円が必要になっています。
20年以上前に森英恵さんがデザインした制服が現在も使用されているという事実は、優れたデザインには時間を超越した価値があることを示しています。親世代が着用した同じ制服を子世代も着用する。これは単なる「古い制服」ではなく、デザイナーの美学が代を超えて伝承される文化遺産ともいえるでしょう。
制服に込められた思い~「豊かな感性に響くように」
森英恵さんは、高校制服について「豊かな感性に響くように」という思いを込めていたと報道されています。これは単に見た目をきれいにするだけでなく、若い世代が着る衣装として、感性や人格の成長に寄与することを考えていたということです。
県立越谷南高校の生徒がNTVのインタビューに応じた際には、こんなコメントを残しています。「袖に控えめに校章の刺繍が入っていて、この蝶のボタンもついていて、お気に入りのポイントです」。細部へのこだわりが、若い世代にもしっかり届いていたのです。
朝日新聞の報道によると、森英恵さんの制服デザインは「上品できちんと」という特徴で知られており、多くの学校から信頼されていました。オリーブ色、グレー、紺色といった洗練された色選びと、細部へのこだわりが一貫して表れています。
高い価値を認識される時代~在学時と卒業後の評価の違い
森英恵さんの訃報を受けて、SNS上では様々な反応が寄せられました。興味深いことに、在学時と卒業後で制服に対する評価が変わっていた生徒も多くいたようです。
Instagramでの投稿では、「高校の制服は森英恵さんデザインのものでした。在学中は『歩く〇〇』とかいろいろ言われたけど(笑)卒業した今となってはとても愛着のある制服です」というコメントが投稿されました。当時は制服の厳格さに戸惑いながらも、時間が経つにつれてその価値を認識していく様子が伝わります。
X(旧Twitter)での投稿からは、「森英恵さん、母校の四天王寺の制服をデザインした方。冬には墓石と呼ばれ、もっと可愛い制服ならなあと他校の制服に憧れた」という当時の率直な思いも見えてきます。これはネガティブな評価ではなく、成長とともに見方が変わっていったことを示すエピソードとして受け取れます。
さらに、女優の森泉さんがInstagramで「ママ森、ありがとう」とコメントした投稿も見られ、デザイナーとしての森英恵さんの遺産が次世代にも受け継がれていることが示されています。
高校選びの判断基準にもなった制服の力
県立越谷南高校の生徒からは、「同じ中学校だった後輩に、『制服がかわいいから、この学校に行きたい』とたくさん言われた」という証言も得られています。これは、森英恵さんの制服デザインが単なる衣装ではなく、高校選びの判断基準の一つになっていたという、興味深い事例です。
制服の良さが進学希望者の決断に影響を与えるというのは、教育現場ではあまり注目されない側面ですが、森英恵さんのデザインの質の高さを示す証拠といえるでしょう。
質の高いデザインには時間を超越した価値がある
森英恵さんは、皇后雅子さまのロイヤルウェディング衣装やオリンピック日本代表選手団のユニフォームなど、国家的に重要な衣装を多く手がけてきました。一方で、高校の制服という日常的な衣装においても、その美学と職人気質は貫かれていたのです。
全国8校の高校で現在も使用されている森英恵さんの制服デザインは、新品購入時は標準的な制服価格と大きく変わらないかもしれません。しかし、30年以上使い続けられ、代を超えて愛されているという事実は、優れたデザインの価値がどれほど深いかを物語っています。
毎日の登下校のなかで、知らず知らずのうちに良質なデザインに触れることで、生徒たちの感性がどのように育まれているのか。それは、森英恵さんが「豊かな感性に響くように」と願った思いが、確かに実を結んでいることを示しているのではないでしょうか。
制服費用が上昇し続ける時代だからこそ、質の高い美学を備えた制服の存在は、より一層貴重なものとなっているのです。

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